元素分析は技術ではなく化学!
元素分析は構造を決定するための化学手段として分析技術の進歩を遂げた一方で、各分野の試料の中のC,H,Nの量を計る計測手段としても進歩してきました。計測による信頼値と化学に基づいた信頼値は異なるのですが、元素分析現場には明確な境界がありません。構造決定のための「元素分析」には「技術のセンス」と「化学のセンス」と「計測のセンス」が必要ですが、とりわけ「化学の知識」を持って、最新の合成される化合物の特徴を把握しながら正しい分析を行う力が求められています!
分析値は正しいか
分析値が予想の理論値に合わなかった場合、分析値に疑問をもたれる依頼者が少なくありません。今回は依頼者も分析者も想定していない分析誤差のお話です。分析機器はパソコンやその他とRS232Cケーブルでつないでいる場合、長さに比例して外部よりノイズを拾う危険性が高くなる。ノイズによって計量結果(データ信号)自体が変わってしまう可能性が非常に高くなる。たとえばIEEE1394(米国電気協会)規格シリアル・・・SCSI接続にかんする規格をPCにつなぐ際、本来のスペックで使わなければならないなどの記載を見つけました。実は初めて国産元素分析装置がつながれたパソコンはNEC9801でした。Basicプログラムで、初めての画面にこれから仕事が楽になるかとわくわくしたものです。そしてプリンターがついて計算結果の含有%がパソコンに表示されると同時に印字されて出てきました。ところがある時パソコンの画面と印刷された数字が違うのです!うっかり見過ごすところでした。この頃は画面を携帯で記録することができますが当時はそうはできないので、メーカーに説明が大変だったことを思い出します。原因はインターフェースでした。気が付かないで報告していたら、正しい分析を行いました・・になることでしょう。当時の確率は1万件分の1件くらい!
A Rabbit Scienceへの謝辞をいただきました!
この度、A Rabbit Scienceへの謝辞を以下の論文に掲載していただきました。
S. Fujii, Y. Eguchi and Y. Nakamura
RSC ADV, 2014, 4 (61),. 32534-32537
Acknowledgements
A Rabit Science is thanked for elemental microanalysis studies.
研究者の論文データへかかわっている分析技術者として「研究の役に立った」実感は重要です! データの一つ一つに正しい分析値を提供できているか・・こだわりを持ちながら、納得したり心配したりが日々の活動の気持の支えになっているのです。メーカーの提供した分析装置を有効に使い、依頼者のニーズとマッチさせる仕事・・・・しっかり評価いただきとてもうれしく思います。小さな会社の精密な技術がすこしづつ地球上に広がって行く夢をもちながら・・・邁進したいと思っております。
50年維持の国産CHN分析技術
医薬品の開発に欠かせない有機元素分析装置を使用しています。その歴史は半世紀にもなりました。元素分析の歴史は100年に及びますが、CHN同時測定と自動化が完成してから半世紀ということです。GCの開発によりTCD検出器が開発され、これを利用してCHN元素の同時測定が可能になりました。燃焼により発生したCHN3成分ガスを吸引してポンプに集める方式が国産機yanacoCHNコーダー・・・ガラス球に加圧して押し込む方式がperkin elmer・・・で日米の研究者が同じ学会で発表した因縁があります。他にその後の開発が数社ありますが、上述2社は似た者同士ということでよく比較されてきました。現在はperkin 社は装置もタテ型になり、合併などで会社の中身が変わっているようです。元素分析装置は環境分野でも用途があり・・・CHN同時法が出たころは島津製作所、日立製作所もそれぞれ開発しました。さらに三田村理化学製もありました。私の手元にすべてカタログは残っています。その後、柳本製作所(後のヤナコ分析工業)のみが残り・・・新たにJ.サイエンス・ラボが設立しています。・・・現在他にも国産機がありますが、50年伝統を引き継いできた日本開発の技術・・・・もっと活用できないだろうか思います。宇宙から帰還された若田さんも人工衛星の中には日本の技術がたくさん詰まっていると話されました。新聞では日中韓の3か国環境相会合で今後5年間測定データを共有して環境の改善に取り組むとありました。燃焼に関するしっかりしたデータの取れる元素分析装置の有効な活用があるので、ぜひご関心いただきたいと思います。ちなみにGC(ガスクロマトグラフィー)の開発は世界ではじめて島津製作所によるもののようです。
材料の元素分析値で8倍もの光電変換効率の違い
構造決定のための元素分析は試料の十分な精製としっかりした乾燥が必要条件です。再結晶を何回も繰り返して精製する時代ではないので、手早く高純度を確保したい。・・・これを利用して従来法で合成した高分子と開発した合成法を比較した元素分析の結果より・・・同じ精製方法であるにもかかわらず開発した方が高純度であるとの知見がありました。従来のクロスカップリング法で必須のホウ素をを使わず、リンの添加も必要としないので元素分析が良く合うというのです。他の分析結果からリンが含まれていないこと、Cd触媒の残存も少ないとあります。分析値よりCの純度を計算すると従来法97.46%、開発法99.93%です。しかるに、実際に太陽電池の材料として用いたら、開発品は4%の光電変換効率が得られ、従来法ではo.5%であったので、開発品の高純度が太陽電池特性の向上に大きく寄与していることが確認できたとありました。使用する材料の純度をしっかり調べることで工業的に8倍もの効果がある! 精密な元素分析値は工業分野でも有用であることにおおいに励まされています。
信頼ある元素分析値のこと
元素分析は構造決定と試料中のC、H、N各元素の定量をする目的があります。どちらもその信頼性について利用する側があまり論じることはないようです。分析技術者の信用が最も重要と思われているからですが、客観的な信頼性を確立することは大事です。構造決定の場合の元素分析は実験値ですので分析過程が明瞭であれば問題ないはずです。秤量値の客観性、分析装置の信号値記録、計算過程など追跡できるようデータが残っていれば良いのですが、産業界で行っている計測の場合はその方面の公定法や標準方法などに準拠しなければなりません。近年は国際的に計測値の比較ができるような取り組みが行われており、弊社でもJCSS校正の行われている天秤の設置や国際認証標準試料へのトレーサブルな分析を行うなど取り組み始めました。報告する数値の信頼性について常に新しい情報を取り入れより良い分析値を提供するよう努めていきたいと思います。
純度>96%表示の試薬が元素分析で合った話
ホウ素含有化合物について元素分析で特に問題になったことはないのですが、依頼されたホウ素化合物が合わないことがあり、ホウ素含有標準試料を常備しよう思いました。純度>96%と表示された試薬をまずはそのまま分析したところ、予想外に理論値にぴったり合いました。合ったのがおかしいとなると仕事自体が成り立たないので、困りました。「元素分析」は試料を燃焼してその結果を含有%で得るものですから、炭素と水素の含有率の分析値が正しいか、あるいは微量の不純の炭素成分が混じった結果かもしれません。十分な精製をしてからでなければ、「元素分析」の数値は信用できないので試しに分析して困った事例になりました。元素分析が合ったので純度は証明されたのでしょうか?
海洋浮遊物の分析
あるお問い合わせがきっかけで、海の有機浮遊物を元素分析しました。持ち込まれたサンプルはアルミホイルでくるまれており、そのまま分析したところC,Nともブランクが検出されました。窒素は梱包試料中の隙間の窒素を計測していると感じ、捕捉前のろ紙を送ってもらい燃焼炉に挿入する方法を試したところ、10μg以下に改善されました。炭素は80μgありました。500μg以下の検出量は元素分析計の検量域外になる場合があります。起源が構造決定目的の計測器なので表示はW%/W%です。μg表示でca10-500μgの定量は分析装置の検量域に関する十分な検証が必要です。既成の装置を高感度にカスタマイズし、触媒を用いた低温で有機物を分解できる弊社の技術はこういう分野にお役にたてると,ただ今いろいろ試しているところです。研究者の皆様のお問い合わせをお待ちしております。info@rabbit-sc.jp
JCSS校正証明書を取得してみました
元素分析値の証明の基本は質量が正しく量られたかどうかです。
最たる手段はいわゆる天びんの校正証明書。測定現場の環境での客観証明としてザウトリウス超微量天びんのJCSS校正を依頼しました。無事JCSS校正証明書S131605号を取得。0-2.0gまでの不確かさと風袋0.5g、1.0g、1.5gを用いての不確かさが明記されていました。しかるにこれは日常の秤量精度の証明にはなりません。弊社の技術は0.5mg以下の正しい分析値を求めている世界。JCSS校正証明書とのつながりが・・・・遠い。まずは、計測事業としての基本である環境を含めた天びん使用状況の客観証明は得ましたことの報告を致します。
整数分子量が72の化合物の話
HRMS(精密質量分析)ではm/zを0.0001amuで決める精度があることから利用が盛んになり、一部の元素分析は衰退しました。
しかし、質量分析の測定担当者からHRMSに頼り切っていかがなものかと聞いたことがあります。ちなみに整数分子量72の化合物はC5H12,C3H4O2,C4H8O,C4H5Fの4種類あります。HRMSはそれぞれ72.0939, 72.0211, 72.0575, 72.0375ですので識別はつくものの差は小さい。もし元素分析をすれば炭素は83.33%, 50.00%, 66.66%, 66.66%ですので先の二つは明確な違いになります。あとの二つは水素が11.11%, 6.94%で明確に違います。このように元素分析をすれば間違いはおこらないので,確実なデータでありわずか0.5mgで測定できるので念のためにもっと利用されてしかるべきと感じます。
