元素分析への研究者の盲点のお話

構造の確定したきれいなサンプルだから元素分析が合わないのはおかしいとよく言われるので、今回は研究者の盲点のお話です。有機元素分析は医薬品合成研究に欠かせない基礎データですが、あまりその方法について学ぶ機会がないようです。実際に測定の経験をされた研究者と稀にメールで出会いますが、殆どんは分析室へサンプルを持ち込んで結果をもらう状況でしょう。現在の有機元素分析はCHN元素が同時に求まります。試料を約950℃、酸素添加で燃焼し、発生したガスをTCD検出器で検出し電気的な信号の変化を標準有機化合物の燃焼ガスより導いた換算係数で算出するものです。分析装置はどのメーカーも分析誤差±0.3%を満たしているので、正しい秤量を行えばまずは正しい値が出るのです。ところが、他の分析器で十分その構造を確定した試料でも分析がわずかに合わないことが多いのです。そうすると、なぜ元素分析が合わないのかということになりますね。この点について合成の専門家(博士)と追及しました。結論は水分か金属の夾雑ではないか・・・これらは他の機器では注目されないことでしょう。水分や金属は試料の重量に影響しますから含有%は狂います。ここが盲点と思っています。水分の検証はリガク熱分析事業部のDr.に発生ガス分析装置で1-10μgの検出限界で可能だということを教えていただきました。Thermo Mass Photo 測定データ集2-15試料中のH2Oの定量(参考)。